体幹部定位放射線治療は、肺がん、肝臓がんの症例に対して適応になります。
【肺がん(腫瘍)に対する定位照射の保険適応】
①リンパ節や他臓器に転移がなく、大きさが最大5㎝以下の原発性肺がん
②肺以外に転移のない3個以内の転移性肺がん
体幹部定位放射線治療を実施する際には、毎回の照射中心の誤差が5mm以内となるような位置精度を実現する必要があります。また、肺は非常に呼吸による移動が大きい臓器であり、そのような照射時の誤差をできる限り減らすための手法が望まれます。
肺癌に対する体幹部定位放射線治療 左)治療前 中)治療計画 右)治療後
【治療回数・線量・期間】
治療回数および照射線量は、50Gy/4回または65Gy/10回照射で実施し、治療期間は1~2週間となります。
【治療手順】
1.毎回の治療時に体や病巣の位置を正確に再現する目的で固定具を作成します。固定具はからだを締め付けることなく、苦痛は伴いません。体型に合わせて作成した固定具の上に寝て頂き、ビニールのシートで包み込み、身体の動きを抑えています(図2)。
肺病巣の特徴として、呼吸と共に上下・前後左右に周期的に移動することが挙げられます。正確に照射を行うためには、呼吸による移動をしっかりととらえる特別なCTの撮像(4D-CT)を行い、呼吸と同期させた画像を取得することにより、腫瘍の呼吸性移動を正確に治療計画に反映させることが可能となっています。 肺病巣の特徴として、呼吸と共に上下・前後左右に周期的に移動することが挙げられます。正確に照射を行うためには、呼吸による移動をしっかりととらえる特別なCTの撮像(4D-CT)を行い、呼吸と同期させた画像を取得することにより、腫瘍の呼吸性移動を正確に治療計画に反映させることが可能となっています。
2.CT撮像後、1週間から10日後に放射線治療を開始します。実際の治療時間は、病巣の部位や照射方法によっても異なりますが、最大で30分程度です。患者様は治療装置の上で寝て安静を保って頂くだけであり、照射中に苦痛は一切ありません。
3.日々の照射では、正確な照射位置精度を担保するためにノバリス-Txに搭載された種々の照射位置照合装置(Cone-beam Computed Tomography: CBCT)や位置補正機能(6-dimension correction system)による、画像誘導放射線治療(Image-guided radiotherapy: IGRT)を実施しています。
4.治療回数および照射線量は、50Gy/4回または65Gy/10回照射で実施しています。
*肺定位照射は、体への負担少なく外来で行える安全な治療ですので、当科でも積極的に実施しています。適応の有無などに関しましても、遠慮なくご相談ください。
肝臓に対する定位放射線治療は平成16年4月1日より以下の疾患に対して保険適応となっています。
①原発性肝がん(直径が5cm以内、かつ他に転移のないもの)
②転移性肝がん(直径が5cm以内、かつ3個以内、かつ他に転移のないもの)
【治療回数・線量・期間】
治療回数および照射線量は治療前の肝機能を考慮し、40Gy/5回または35Gy/5回照射で実施しています。
【治療手順】
1.治療計画用CT撮影時から照射終了までの期間を通じ、専用の吸引式患者位置固定システムを使用しています。個々の患者様の体格に合わせて成型することにより毎回の照射時における体位の再現性を向上し、肝臓の呼吸性移動も最小限に抑えることが可能となります。
2.治療計画用CTは、呼吸と同期させた4D-CT画像を取得することにより、腫瘍の呼吸性移動を正確に治療計画に反映させることが可能となっています。
3.日々の照射では、正確な照射位置精度を担保するためにノバリス-Txに搭載された種々の照射位置照合装置(Cone-beam Computed Tomography: CBCT)や位置補正機能(6-dimension correction system)による、画像誘導放射線治療(Image-guided radiotherapy: IGRT)を実施しています。
4.治療回数および照射線量は治療前の肝機能を考慮し、40Gy/5回または35Gy/5回照射で実施しています。
今後、線量増加を検討しています。
当院では体幹部定位放射線治療の適応とならないようなサイズや、門脈腫瘍栓や静脈腫瘍栓等の著明な脈管浸潤を認めるような症例については、肝臓外に明らかな活動性病変が指摘されない状況であれば回転型IMRT(VMAT)を用いた放射線治療を施行しています。
照射における位置精度の担保やその手法は体幹部定位放射線治療と同様です。治療前の肝機能や標的となる腫瘍のサイズ等によっては、放射線治療自体が困難な場合や、投与線量を少なくせざるを得ない症例もごく稀にありますが、基本的には総線量50Gy/20回または、60Gy/30回の照射を実施しています。
また、肝内病変のようにRFAや血管内治療では治療困難な、原発性肝癌、肝門部のリンパ節に転移、門脈腫瘍栓のような症例についてもVMATによる照射を施行し、良好な局所制御を得られています。
転移性肝腫瘍に対する定位照射の一例
肝細胞癌下大静脈腫瘍に対する回転IMRT(VMAT)の一例
腹部リンパ節転移に対するVMATの一例