そけいヘルニア(脱腸)は、
日帰り手術で治療
そけいヘルニア(脱腸)とは
そけいヘルニアとは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、そけい部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。
そけいヘルニアといっても聞きなれない人もいるかもしれませんが、脱腸(だっちょう)とも呼ばれてきました。
「そけい」とは、太ももの付け根の部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
そけいヘルニアは乳幼児から高齢者まで幅広く起こりうる病気です。乳幼児の場合は先天的な要因がほとんどですが、成人の場合は運動不足も含め身体の組織が弱くなることが要因です。
中年以上の男性に多く見られ、立ち仕事をしている人や便秘症・肥満気味の人が多いようです。今日の日本では子どもが少なくなり、お年寄りが増加傾向にあるので、大人のそけいヘルニアが増加傾向にあります。
そけいヘルニアは、大きく下記の3つに分類されます。

外そけいヘルニア
ほとんどの幼児と成人が発症するのが、外そけいヘルニアです。陰のうにまで達している(腫れる)場合もあります。
内そけいヘルニア
中年以降の男性に多いのが、内そけいヘルニアです。両側が腫れる場合が比較的多いヘルニアです。
大腿ヘルニア
女性に多く、特に出産後の女性に多いのが特徴です。 そけい部の下、足への血管の脇へはみ出すヘルニアです。最も嵌頓(かんとん)を起こしやすいヘルニアなので早急に治療が必要です。

そけいヘルニアの症状
そけいヘルニアとは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、そけい部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。
ヘルニアとは
「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
そけいヘルニアになると、立った時やおなかに力をいれたときに、足のつけ根のところに柔らかいふくらみが出てきます。この状態だと、寝たり、手で押さえると引っ込みます。この段階では特に痛みは感じないので軽く考えがちです。おそらく、脱腸だと気づかない人もいることでしょう。
そけいヘルニアかも、と気づく頃には痛みと、違和感を感じるようになります。 「長時間立っているのが辛い」「息苦しい」「時々、鋭い痛みが走る」 「お腹が突っ張っている感じが常にする」といった症状が出てきます。
こうなってくると、生活に支障が出てきてしまうので、ストレスにもなってしまいます。
嵌頓(かんとん)状態
ヘルニア部分が、筋肉でしめつけられ戻らなくなった状態になってしまいます。この状態を嵌頓(かんとん)状態といいます。
そけいヘルニアを放置していると、この嵌頓ヘルニアになってしまう危険性があります。 腸が嵌頓を起こすと、腸の中を食べ物が流れていかなくなってしまい腸閉塞を起こします。 また、しめつけられた腸に血液が流れなくなり、腸の組織が死んでしまい(壊死)、命に関わる場合もあります。
嵌頓は、いつ起こるのか予想できません。 嵌頓が起きた場合には緊急手術が必要になります。腸の壊死があった場合には腸を切除しなくてはならないこともあり、長期の入院治療が必要になります。 普段の数倍の大きさになり戻らないときにはすぐに救急病院を受診してください。

鼠径ヘルニアの治療
様々な手術方法がある中で、当センターでは患者様の希望・状況に合わせて、主に以下の手術を提案しています。いずれの術式も現在主流となっているメッシュと呼ばれているシートを用いる方法で、治療効果だけではなく、辛いと言われている術後合併症の慢性疼痛軽減に優れた方法と考えています。
鼠径部切開法
(ヘルニア部分の皮膚を切開する方法)
① Kugel法
② ONSTEP法
腹腔鏡手術(TAPP)
術式による切開の違い

鼠径部切開法

腹腔鏡手術
術式による切開の違いは、以下のようになります。鼠径部切開法は、ヘルニアのある鼠径部を約3〜5センチ程度切開します。腹腔鏡手術の場合は、お臍からカメラを入れる穴と鉗子を挿入する穴を開けます。それぞれ0.5〜1センチ程度です。
*当センターでは上記方法だけではなく患者様の状況に応じて様々な手術方法の提供が可能です。患者様の希望だけではなく全身状態、ヘルニアの状態に応じて、鼠径部切開方がよいのか又は腹腔鏡手術が良いのか、ヘルニアをメッシュで治すのか又は縫合して治すのか、麻酔方法、そして日帰りが良いのか入院が良いのかも含め最適な治療方法を提案しています。
ONSTEP法(鼠径部切開法)
ONSTEP法は2013年にポルトガルのAugusto LourençoとRui Soares da Costaにより報告され、ONFLEXメッシュの内側は腹膜前腔に、外側を内腹斜筋の上に留置する新しい術式です。
一部のヘルニアには適応はありませんが(大きなヘルニアや女性など)、理論上慢性疼痛軽減に有効と報告されています。比較的簡便・短時間で行える術式として日本でも行われるようになってきており、治療成績も良好です。


ONSTEP法の外側からみた図で、点線の部分がメッシュのイメージです。
内側は腹膜前腔に、外側は内腹斜筋の上に留置します。シートで挟み穴を塞ぐ形になります。
出典: Surgery Research and Practice Volume 2016, Issue 1
腹腔鏡手術(TAPP)
へそ、左右腹部の計三か所の穴をあけ、おなかの中の空間を二酸化炭素で膨らませ、カメラ、手術器具を用いて手術します。
キズが小さいため、術直後の経過が楽です。長期的な治療成績は鼠径部切開法と同等といわれています。
カメラの拡大視効果で、より精密な手術が可能です。さらに、同じ三か所の穴で、反対側の確認だけではなく両側手術も可能です。
他の腹腔鏡手術と同様に外科医の慣れが必要な手術ですが、当センターでは日本内視鏡外科学会技術認定医が手術に入りますので安心です。


鼠径ヘルニア治療でよくある質問
そけいヘルニアは薬やバンドで治せると聞いたことがあるのですが・・・
そけいヘルニアが治るお薬はありません。手術をすることで簡単に治ります。 ヘルニアバンドといった治療器具もありますが、進行を止めるのに使用するだけで治療するものではありません。バンドを着けているときは出てきませんが、常に着けている必要があります。
一度手術をすると、再発はしないのでしょうか?
以前の手術方法では10%に及んだ再発率も、現在の手術方法では5%以下と言われています。
以前に手術を受けていますが、再発しています。手術は可能でしょうか?
再発した場合でも、適切な手術を行うことで治療することが可能です。
手術後の痛みはありますか?
以前の手術方法では、筋膜と筋膜を引き寄せて縫合するため、つっぱったような痛みが1週間ほど続いていました。 現在の手術方法では、ある程度のつっぱり感と痛みはありますが、鎮痛薬でおさまる程度の痛みです。
そけいヘルニアを放っておくとどうなりますか?
ヘルニア状態を放っておくと、飛び出たヘルニア部分が、 筋肉でしめつけられ戻らなくなった状態になってしまいます。 この状態を、嵌頓(かんとん)状態といいます。
腸が嵌頓を起こすと、腸の中を食べ物が流れていかなくなってしまい腸閉塞を起こします。
また、しめつけられた腸に血液が流れなくなり、 腸の組織が死んでしまい(壊死)、命に関わる場合もあります。
嵌頓は、いつ起こるのか予想できません。嵌頓が起きた場合には緊急手術が必要になります。
腸の壊死があった場合には腸を切除しなくてはならないこともあり、 長期の入院治療が必要となります。