内視鏡による治療

最新の機器を使った安全で正確な治療を提供します。

内視鏡による治療

当科では、高度な低侵襲内視鏡治療を安全に行うだけでなく、患者さんのニーズに合わせQOL(Quality of Life)に最大限配慮し治療を行うことをポリシーとして掲げております。忙しい現代人にとって入院期間は大きな障壁となります。短期入院での治療をご希望の方はご相談ください。




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消化管の早期癌に
対する内視鏡的粘膜下層剥離術
(ESD)

どんな治療?

ESDは内視鏡の先端から特殊な電気ナイフを出し、直接そのナイフで粘膜を切開し、 粘膜下層を剥離し、消化管の内側から癌を剥ぎ取るように切除します(図1~5)。

図1 粘膜下層に液体を注入し粘膜下層を広げておいて、電気ナイフで粘膜切開および 粘膜下層剥離をする

狙った範囲を大きさの制限を受けることなく確実に切除できるため、どのような病変に 対しても一括切除が可能で、腫瘍の取り残しや再発を心配する必要がありません。

図2 早期大腸癌、約3CM

図3,4 病変の周囲粘膜を電気ナイフで切開し、続けて病変下の粘膜下層を剥離する

図5 病変の一括切除が完了、切除後は治療による人工的な潰瘍となる

治療に伴うリスクは?

消化管の壁は非常に薄いためそこから癌を剥ぎ取るという行為は、文字通りミリ単位の仕事が要求されます。 ましてやそれを内視鏡を使った遠隔操作で行うためESDは難易度の高い治療手技です。

一歩間違えれば胃や腸に穴があき(穿孔という)、胃酸や腸液がおなかの中に漏れ、 腹膜炎という重篤な腹部の炎症を引き起こし、緊急手術が必要になることもあります。

またナイフで切開・剥離をしていれば当然出血もします。太い動脈からの出血などで 出血量が多くなれば輸血が必要になることもあります。

しかしながら幸い当院では、現在までに偶発症により緊急手術や輸血を要したことは1例もありません。

痛くないの?

治療中は静脈麻酔(全身麻酔ではない)で熟睡しているため、治療中は苦痛がなく、 終了時に声をかけると「あれ、もう終わったのですか?」といった状況になります。

治療時間や入院期間は?

治療時間は症例によって異なりますが通常およそ1時間です。入院期間は一般的には治療日を含めて5日間の入院ですが、当院では患者さんのニーズに合わせ1泊2日での治療も施行可能です(患者さんの状態や病変によってはご希望に添えない場合もございます)。

治療した部位は、人工的な潰瘍となりますが痛みなどの症状はなく、 1~2カ月で治癒し瘢痕化します(図6)。

切除された癌の深さや広がりを顕微鏡的に評価し問題なければ「治癒」と判定されます。

図6 治療2ヶ月後には潰瘍部分は治癒し瘢痕化する

どんな癌ならESDで治るの?

消化管の構造は図7の様になっております。癌は粘膜より発生し増大し粘膜下層や筋層へと浸潤(増殖し広がること)します。また進行するとリンパ節や他の臓器へと転移します。

ESDで治療できるのは原則的に「粘膜にとどまる癌」であり、かなり早期の癌に限られます。 早期の癌は無症状であるため症状が出てからでは遅く、無症状のうちに検診などで発見しなければなりません。

逆に無症状の段階で検診を受け癌が発見された方の多くは内視鏡治療の適応になります。 消化管の癌は臓器別死因の上位を占めており、その早期発見・早期治療は患者さんにとっても我々にとっても重要な課題です。

症状のある方はもちろん、症状がなくても40歳を超えたら胃カメラと大腸内視鏡検査を一度は受けることをお勧めします。また他院で早期癌と診断され手術を勧められた患者さんも、ESDで治療ができないのかセカンドオピニオンも当院では受け付けております。

当院は患者さんにとってやや足が遠のきがちな内視鏡検査を出来るだけ苦痛なく提供すべく、嘔吐反射の少ない経鼻内視鏡や寝ているうちに終わる意識下鎮静法やUPDを使用しての大腸内視鏡検査などを施行しています。

「楽な検査→受診率向上→早期発見→低侵襲医療の提供→患者さんの満足」という良い流れが生み出せるよう内視鏡チーム一同、日々努力しています。

短期滞在内視鏡治療
(1泊-ESD, 1泊-ERCP etc.)

消化管の早期癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や総胆管結石除去のためのERCPは低侵襲治療である一方で、一定の頻度で偶発症が存在するため、本邦では多くの施設で5日〜1週間の入院を要する治療とされています。
以前より、外科/日帰り手術センターで短期滞在手術を推進してきた当院では、内視鏡部門においても1泊入院で高度な内視鏡治療を提供できるような体制を導入しています。ご希望の患者さんはご相談ください。

食道胃静脈瘤に対する内視鏡的食道静脈瘤結紮術・硬化療法
(EVL・EIS)

どんな治療?

この治療(内視鏡的静脈瘤結紮術;EVL、内視鏡的静脈瘤硬化療法;EIS)は食道や胃の 静脈瘤(図1)に対して内視鏡を用いその消失を目的としておこなう方法です。

食道や胃に出来た静脈瘤を放置すると静脈血管からの出血(静脈瘤破裂)を起こす危険 が高くなり、最悪の場合出血ショックにより死に至ることもあります。

予防的にこの治療を行うことにより出血のリスクを低下させることが出来ます。

また、出血している場合には緊急治療としておこなう場合もあります。

具体的には?

内視鏡(胃カメラ)を通して緊急時(出血時)あるいは予防的に静脈瘤を治療する方法です。 前者は静脈瘤自体を小さな輪ゴムで止めることにより静脈瘤の血流を遮断する(図2)ことにより、 後者は静脈瘤の血管内に硬化剤を注入することにより静脈瘤を消失させます。

軽度の静脈瘤ではEVL単独でも治療可能ですが、高度の静脈瘤ではEISとEVLを組み合わせて 治療します。1回の治療時間は10 分~1時間と症例により差があります。合計3~4回、治療間隔は 2週間~2ヵ月となります。緊急例でなければ入院期間は3日間です。

治療に伴うリスクは?

EVLではほとんど偶発症は起こりません。EISでは頻度は少ないですが肺塞栓、 門脈塞栓、硬化剤による肝・腎機能障害、食道潰瘍、穿孔(消化管に穴があくこと)、 縦隔炎などが起こりえます。

治療時間や入院期間は?

治療時間は症例によって異なりますが通常およそ1時間です。入院期間は治療日を含めて5日間の短期入院です。

治療した部位は、人工的な潰瘍となりますが痛みなどの症状はなく、 1~2カ月で治癒し瘢痕化します(図6)。

切除された癌の深さや広がりを顕微鏡的に評価し問題なければ「治癒」と判定されます。

図6 治療2ヶ月後には潰瘍部分は治癒し瘢痕化する

胆膵疾患に対する内視鏡的逆行性
胆管膵管造影(ERCP)
超音波内視鏡(EUS)

どんな治療?

ERCPは、専用の内視鏡を十二指腸まで挿入し、胆管および膵管の十二指腸への開口部を 確認し、その開口部へ細い道具を挿入して胆膵疾患の診断・治療を行います。

主には総胆管結石の治療や胆管癌・膵癌の診断に用います。

EUSは通常の腹部超音波(エコー)検査に比べて目的の病変(特に胆道や膵臓)の近く から観察が行えるため、より詳細な病変の情報を得ることができ、針を用いた組織検査 (超音波内視鏡下穿刺吸引術:EUS-FNA)による確定診断も可能です。

※治療のイメージとエコーの画面

痛くないの?

ERCPもEUSも通常の胃カメラより太い専用の内視鏡を使用します。鎮静剤を使って患者さんが眠っているうちに検査及び治療を終了させますので痛みは感じません。

胆道鏡(SpyGlass)と電気水圧衝撃波(EHL)を用いた
内視鏡的胆管結石破砕術

2cmを超えるような巨大な総胆管結石や嵌頓結石, 肝内胆管結石などは、内視鏡治療”困難結石”と呼ばれ、手術加療が行われることが多くあります。
当院では、これらの”困難結石”に対し、SpyGlass(経口胆道鏡)とEHL(電気水圧衝撃波)を用いて、内視鏡直視下に結石破砕・除去・遺残結石確認を行なっております。SpyGlassは腫瘍の精査にも有用ですが、民間病院でSpyを所持している病院は非常に少ないのが現状です。



胆道鏡(SpyGlass)と電気水圧衝撃波(EHL)を用いた<br>内視鏡的胆管結石破砕術

癌性疼痛に対する超音波内視鏡下腹腔神経叢ブロック術
(EUS-CPN)

膵癌患者など癌性腹痛に悩まれる方は麻薬性鎮痛剤でコントロールを試みますが、中には量を増やすと副作用が増え、減らせば疼痛が増強するような患者さんがいらっしゃいます。そのような方に超音波内視鏡ガイド下腹腔神経叢ブロック術(EUS-CPN)が良い適応となります。超音波ガイド下に腹腔神経節やガングリオンを穿刺しエタノールなどを注入します。疼痛が緩和され麻薬を減量あるいは離脱できると報告されております。重篤な偶発症は少なく、一過性の疼痛増強や低血圧が見られることがあります。



癌性疼痛に対する超音波内視鏡下腹腔神経叢ブロック術癌性疼痛に対する超音波内視鏡下腹腔神経叢ブロック術

内視鏡的消化管
胆管メタリックステント留置術

どんな治療?

癌などの悪性腫瘍が進行すると腫瘍により消化管や胆管が閉塞してしまい 通過障害をきたす場合があります。

全身状態として手術が可能な場合は手術を選択することもありますが、 より低侵襲な治療として内視鏡を用いてメタリックステント(金属製の網でできた筒; 図参照)を閉塞部に置くことで内腔を確保し通過障害を改善させる治療です。

内視鏡センターからの
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